運命の輪
∞
マサミレッタさま
+ 2 +
『ティータ、お誕生日おめでとう』
『ありがとう、兄さん。わたし、やっぱり兄さんに祝ってもらうのが一番嬉しい』
イグーロス城の裏庭。木漏れ日の中、ティータが微笑んだ。自分だけに見せてくれる、一番自然な笑顔。
『ちょっと目、閉じててくれるか?』
突然の兄の言葉に、彼女はきょとんとする。
『え?』
『いいから、さ』
『じゃあ……、こう?』
目を閉じたのを確認すると、ディリータはポケットから指輪を取り出して、彼女の細い左の中指にはめる。
『目、開けてもいいぞ』
ティータはゆっくり目を開ける。
小さな紅いガラス玉の入ったシンプルなリングだった。縁日の露店にあるようなものだが、彼らにとっては十分なものだった。
『――わあ、きれい……』
目を輝かせるようにして、ストレートに喜びを表現する、ティータ。何よりも自分のために兄が選んでくれたことがうれしかったのだ。
ディリータは少し照れるように、答える。
『……プレゼント。来年からアカデミーだから、直接祝えなくなるかもしれないから』
『うれしい……。ありがとう。わたし、これ……大切にするね』
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