運命の輪

マサミレッタさま

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『ティータ、お誕生日おめでとう』

『ありがとう、兄さん。わたし、やっぱり兄さんに祝ってもらうのが一番嬉しい』



 イグーロス城の裏庭。木漏れ日の中、ティータが微笑んだ。自分だけに見せてくれる、一番自然な笑顔。


『ちょっと目、閉じててくれるか?』

 突然の兄の言葉に、彼女はきょとんとする。


『え?』

『いいから、さ』

『じゃあ……、こう?』


 目を閉じたのを確認すると、ディリータはポケットから指輪を取り出して、彼女の細い左の中指にはめる。


『目、開けてもいいぞ』


 ティータはゆっくり目を開ける。

 小さな紅いガラス玉の入ったシンプルなリングだった。縁日の露店にあるようなものだが、彼らにとっては十分なものだった。


『――わあ、きれい……』

 目を輝かせるようにして、ストレートに喜びを表現する、ティータ。何よりも自分のために兄が選んでくれたことがうれしかったのだ。


 ディリータは少し照れるように、答える。

『……プレゼント。来年からアカデミーだから、直接祝えなくなるかもしれないから』
『うれしい……。ありがとう。わたし、これ……大切にするね』



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